こんにちは、ピノスケです!
先日私のツイッターにて実際薬剤師として働かれている方の退職金事情に関してお伺いしました。
このツイートに対して30名を超える薬剤師の方から退職金に関する貴重な情報を提供していただきました。
ご協力いただいた皆様本当にありがとうございます(泣)
私が薬剤師の退職金について着目したきっかけは、知人の薬剤師が10年勤務した薬局を退職した際、退職金が0だったという話を聞いたことです。
老後2000万円問題という話があり、一般的な会社員にとって老後資金の柱の1つに退職金を据えている方は多いと思います。
そんな中、知人の退職金0という話を聞いて我々薬剤師の多くが働く薬局や病院の退職金は一体どれほどもらえるのだろうか?老後資金の柱になるほどの退職金は期待できるのか?という点について疑問に思いました。
今回の記事では、実際に薬局や病院、ドラッグストアで勤務されている薬剤師のリアルな退職金事情を知ることができます。
また、退職金に関して知っておくと役に立つ知識も併せてまとめています。
今回の記事で職場と薬剤師の金銭的な面でのミスマッチを減らし、薬剤師の皆さんが今後の資金計画を立てる参考になれば幸いです。
では早速参りましょう!
退職金の基礎情報
まずは、世の中の退職金事情、基礎知識について簡単に触れていきます!
世の中の退職金相場
まずは世間一般の退職金事情について触れていきます。
大企業、中小企業の退職金平均は以下のようになっています。
大企業(大卒) | 中小企業(大卒) | |
平均退職金額(定年退職) | 約2000万円 | 約1100万円 |
これらの数値は大学卒業後すぐに入社し、定年まで働き必要な昇進等した場合のモデル金額です。
業種等によっても異なるため、あくまで参考程度に!
また、金額に関しては勤続年数により変動することはもちろんですが、もう一点変動要素があります。
それは退職理由です。
定年まで働き退職する「定年退職」、リストラなどの会社都合により退職する「会社都合退職」、転職や結婚等自己都合で退職する「自己都合退職」があります。
このうち「自己都合退職」の場合は、退職金が少なくなるケースがほとんどです。
退職金がもたらす金銭的インパクト(退職所得控除)
次は退職金がいかに経済的なインパクトがあるか例を用いて解説していきます。
生涯収入が2億円のAさん、Bさんがいます。
※いずれも配偶者あり、扶養なし、勤続40年とします
- Aさんは年収450万円×40年+退職金2000万円で生涯収入が2億円
- Bさんは年収500万円×40年(退職金なし)で生涯収入が2億円
まず退職金を除いた赤文字の給与面のみで手取り額を比較してみます。
※使用する手取り額は2名とも同条件のモデルケースで概算しています。計算の詳細な解説は割愛しています。
Aさん | Bさん | |
額面給与合計 | 1億8000万円 | 2億円 |
概算手取り額合計 | 1億4000万円 | 1億5400万円 |
給与面のみ比較した段階では年収が多いBさんが1400万円手取り収入が多い状態です。
ここでAさんの退職金2000万円を考慮した手取り額を比較します。
Aさん、Bさん共に生涯収入2億円での最終的な手取り額は・・・
- Aさん:1億6000万円
- Bさん:1億5400万円
あれ?同じ生涯収入2億円なのに年収の少ないAさんの方が手取り多くなってる
実はAさんの退職金2000万円にかかっている税金は0なんです
退職金は給与と同じく課税対象です。
しかし、給与と大きく異なる点が「退職所得控除」という神システムがあるということです。
私たちの給与も額面の金額で税金を算出しているわけではなく、様々な控除を差し引いた「課税所得」というもので税金を算出しています。
退職金の場合も同様に額面の退職金額からこの退職所得控除を差し引いて残った金額に対して税率をかけ税金を求めます。
しかし、この退職所得控除での控除額が給与の比じゃありません。
退職所得控除の求め方は以下の通りです。
退職所得控除額 | |
勤続20年以下の場合 | 40万円×勤続年数(80万円未満であれば80万円) |
勤続20年超の場合 | 800万円+70万円×(勤続年数-20万円) |
今回のケースでAさん(勤続40年)の退職所得控除は
800万円+70万円×(40-20)=2200万円
つまり、Aさんは2200万円までの退職金であれば税金がかからず、額面=手取りとなります。
よってAさんの退職金2000万円の手取りは2000万円となり、最終的な手取り額でBさんよりも600万円多くなるという事象が発生しました。
また、仮に退職所得控除を差し引いても退職金が残った場合、その残った退職金を1/2にして税金を計算します(下図参照)。
ちょっと難しく色々書きましたが、要は
退職金にかかる税金はめちゃくちゃ少ない!
とだけ覚えていてください!
薬剤師の退職金事情
前置きが長くなりましたが、ここから薬剤師のリアルな退職金の話にうつっていきます!
薬局や病院、ドラッグストアそれぞれの退職金相場はまちまちです。
例えば、中小企業退職金共済に加入している薬局の勤続30年での退職金相場(会社都合退職)は680万円〜1100万円、公立病院における勤続30年での退職金相場(会社都合退職)は地方公務員退職金制度を参考にすると1700万円程。
ドラッグストアにおいては管理薬剤師、店長、エリアマネージャーなど役職で受け取りの退職金は大きく異なる傾向にあると言われています。
さて、実際に退職をされた薬剤師が受け取った退職金は一般的な相場と比べて妥当なものなのでしょうか?
実例をもとに比較してみましょう!
病院薬剤師の退職金事情
まずは、病院勤務で退職された方の退職金受け取り状況を見ていきましょう!
勤続年数 | 退職金 | 備考 | |
大学病院 | 10年 | 80万円 | 自己都合退職 |
一般病院 | ー | ー | 退職金なし(役職についても同様) |
一般病院 | 3年 | ー | 退職金なし |
一般病院 | 20年 | 500万円 | 自己都合退職 |
一般病院 | 10年 | 90万円 | 自己都合退職 |
公立病院 | 12年 | 170万円 | 在籍中に総務へ確認した金額 |
公立病院 | 3年 | 30万円 | 自己都合退職 |
公的病院 | 60歳 | 2000万円 | 定年退職 |
公立病院・公的病院の薬剤師は公務員扱いとなるため、お話をお聞きした全ての方が退職金を受け取られていました。
国立病院なども同様に公務員扱いとなるため、退職金を受け取ることが可能と推察できます
しっかり勤続年数が長いほど退職金が増えていますね!
一方、医療法人等の一般病院や大学病院では退職金に大きく差が出ています。
特に病院によっては退職金制度自体存在していない病院もありました。
薬局薬剤師の退職金事情
次に調剤薬局を退職された薬剤師の退職金を見ていきましょう!
※ここでは30店舗以上展開している薬局を大手と定義しています。
※中小企業退職金共済→以下、「中退共」
勤続年数 | 退職金 | 備考 | |
大手調剤薬局 | 4年 | ー | 確定拠出年金での積立金40万円 |
大手調剤薬局 | 13年 | ー | 確定拠出年金(積立金不明) |
大手調剤薬局 | 3年 | 20万円 | 自己都合退職 |
大手調剤薬局 | 10年 | 200万円未満 | 3年目から支給(10年目までの退職では減額有)、10年目からは満額支給 |
大手調剤薬局 | 5年 | 120万円 | 基本給×年数×規定倍率、自己都合退職 |
大手調剤薬局 | 10年 | 20万円 | 10年目以降より退職金付与率上昇、自己都合退職 |
中小調剤薬局 | ー | 不明 | 3年目から退職金支給の契約だが、入社年度により差があり金額の規定なし |
中小調剤薬局 | 20年 | 400万円 | 自己都合退職 |
中小調剤薬局 | 5年 | ー | 退職金なし |
中小調剤薬局 | 10年 | 110万円 | 退職金に加え確定拠出年金あり、役職により退職金増額、自己都合退職 |
中小調剤薬局 | 5年 | 30万円 | 自己都合退職 |
中小調剤薬局 | ー | ー | 確定拠出年金(積立金不明) |
中小調剤薬局 | 4年 | 40万円 | 役職についていた期間(月)×5000円+中退共、自己都合退職 |
中小調剤薬局 | ー | ー | 確定拠出年金(積立金不明) |
中小調剤薬局 | ー | ー | 退職金なし |
中小調剤薬局 | 14年 | 200万円 | 自己都合退職、中退共含む |
中小調剤薬局 | 在籍中 | 中退共 | |
中小調剤薬局 | ー | ー | 退職金なし |
中小調剤薬局 | 7年 | 30万円 | 自己都合退職、管理薬剤師での金額 |
中小調剤薬局 | 5年 | ー | 退職金なし(役職でも同様) |
今回伺った薬局の情報では2割の薬局で退職金制度(確定拠出年金、中退共含む)がありませんでした。
一方、老後資金確保の目的で確定拠出年金を導入している薬局がみうけられ、確定拠出年金のみ導入している薬局もあれば、福利厚生が手厚い薬局では自社退職金+確定拠出年金のケースもありました。
私の現在の職場も退職金はなく確定拠出年金のみです。
また、中小薬局では中退共に加入し退職金を確保している薬局もあります。
こちらも、中退共のみあるいは中退共+自社退職金のケースがありました。
確定拠出年金、中退共がいまいちわからない方向けに簡単に2つの制度について解説をしておきます!
また、今回の事例で大手と中小の退職金制度を比較した際の傾向としては
- 大手:退職金発生までに数年要する、あるいは一定の勤続年数以上で退職金が上昇
→勤続期間にフォーカスしている傾向あり - 中小:役職により退職金が異なる傾向あり
大手調剤薬局は人の流出が激しいから、退職金に勤続年数補正をかけて流出抑制をしているのかも!?
ドラッグストア薬剤師の退職金事情
DSは情報が少なかったため、私の勤めていた大手DSの事例も詳しく解説しています!
勤続年数 | 退職金 | 備考 | |
大手ドラッグ | 4年 | 50万円 | 自己都合退職 |
大手ドラッグ | 5年 | 6万円 | 自己都合退職 |
大手ドラッグ | 3年 | ー | 退職金なし(満3年目以降支給の可能性あり) |
ドラッグストアは事例数が少なく現時点では大きな傾向を掴むことできませんでした。
ですが、この3つの事例はそれぞれ別の企業です。
大手ドラッグストアでもここまで大きく退職金制度に差があることがわかります。
ドラッグストアだけ、事例が少なく寂しいので特別に実際私が勤めていた大手ドラッグストアの退職金制度にいて少し詳しく見ていきましょう!
ピノスケ前職の退職金制度実例
私が勤務していたドラッグストアの退職金は退職金ポイントにより決定されました!
退職金ポイントは1年目から月々加算され、自身の給与明細にて付与ポイントと累計ポイントを確認することができました!
実際の給与明細の抜粋がこちらです↓
この時は月々8.4ポイントずつ付与されていますね。
そしてこの退職金ポイントは自身の社内資格(当時10等級)により付与ポイントが異なります。
実際、上記添付明細月に昇格試験を合格していたので翌月から以下のように付与ポイントが変更になりました↓
1等級上昇し、付与ポイントが8.4から16.7へ上昇しています!
私が勤めていたドラッグストアの退職金制度まとめ
- 1年目からの退職金ポイントの累積により退職金が決定
- 退職金ポイントは社内資格等級を上げると上昇する
- 職位による退職金加算はなし
このように退職金に関してポイント制度を導入している企業も存在します!
薬剤師の退職金事情まとめ
最後にまとめと考察を行なっていきます
退職金が安定していたのは・・・
病院、薬局、ドラッグストア3職種の退職金事情を比較した際、最も安定して退職金が支給されていたのが病院でした。
特に公務員扱いとなる公立病院や国立病院は公務員規定に則っているため、より安定感がありました。
一般病院や調剤薬局、ドラッグストアは各職場ごとに規定が異なるため就職前に確認が必要ですね!
思ったより薬剤師の退職金が少ない・・・
今回の事例を見ていただくとわかるように、ほとんどの事例で100万円以下の退職金となっています。
ほとんどの方が「あれ?退職金少なくね?」と思うでしょう
ここで考えられる理由が2点
- 昨今薬剤師も転職あり気の就職が多く、1職場での勤続年数が短い傾向にある
→特に調剤薬局やドラッグストア - 転職に伴う自己都合退職が大半を占め、会社都合退職に比べ減額されている
1つ目の理由については、当たり前のことですが勤続年数が短ければそもそも受け取ることができる退職金が少なくなります。
2つ目の理由については、「退職金の基礎知識」でも述べた通り「自己都合退職」は「会社都合退職」に比べ減額されるケースがほとんどです。
一般には自己都合退職で退職金が20%〜30%程度減額されると言われています。また、退職金制度を導入していても3年未満の退職では減額ではなく退職金自体支給されないといったケースもあります。
故に、薬剤師は転職等により、短い勤続年数で自己都合退職が多いため退職金が想定よりも少ないといったケースに陥るのではないでしょうか。
最後に
「退職金の基礎知識」でもいった通り、退職金にかかる税金は給与に比べ遥かに少額で生涯収入において大きなインパクトを与えることは間違いありません。
一方で、退職金制度がなくても給与がそもそも高い職場やその他福利厚生が充実した職場ではそれだけで十分な資産形成を行うことができます。
また、20年前と比較し現在の退職金平均金額は約1000万円も減っています。
終身雇用崩れ始め、退職金も減額の流れが来ています。
退職金制度があるから安心できる社会ではなくなって来ていることは念頭に置かなければなりません。
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